院長コラム
2024.10.13
親がお子さんに残せるものと言ったら何があるでしょう?すぐに思い浮かぶのが財産ですね(笑)。でもどれだけ残せばいいのかわかりませんし、そもそも自分の老後を考えていたら、財産を残すどころではない人もいらっしゃるでしょう。
将来子供さんが一人で自立していくとき、一番役に立つ財産は健康な体です。そのために一番大切なこと、それが歯の健康なのです。
しかし乳歯が生えてきたばかりの子どもは、自分自身で歯のケアをすることができません。そこでお子さんへの一生の財産として、乳歯の段階から永久歯の健康を考えて、それを実践してあげませんか。
乳歯は人間が胎児のときから形成されます。そして出産からしばらくして、まだ乳歯が生えていない段階にもかかわらず、永久歯は歯茎の中で形成され始めます。赤ちゃんの口を覗いて歯が生えていなくても、その中では永久歯が成長しているのです。
あまり理解されていないのですが、乳歯の役割はただ食べ物を咀嚼するためだけに存在するのではありません。乳歯はそのすぐ下で待ち構えている永久歯が正しい位置に生えてくるように誘導する役割を持っています。つまり乳歯の健康は永久歯の健康に直接結びついているのです。
歯というものは1本1本が独立して存在しているような錯覚に陥りがちです。けれども1本の歯が健康な状態を保つためには、その両隣にある2本の健康な歯に支えられているのです。むしろすべての歯は、お互いに支え合っていると考えた方がいいでしょう。
永久歯が生えている隣の乳歯が、虫歯の影響で1本抜けたとします。するとすでに生えていた永久歯は、抜けあとの空間に傾き、新たに生える永久歯の空間を狭める結果になるのです。待機している永久歯としては、「ちょっとまだ用意ができてないのだけど!」と焦っているかもしれません(?)その結果歯並びが悪くなるのです。
乳歯が虫歯になると、乳歯の根っこに細菌がたまり、永久歯の発育を阻害するだけでなく、永久歯も虫歯にかかりやすくなるのです。
虫歯とはミュータンス菌に代表される、虫歯菌と言われる数種類の細菌の活動によって引き起こされます。よく甘いものを食べれば虫歯になると言われますが、無菌状態の口の中に糖分のみが存在したとしても虫歯にはなりません。虫歯菌と糖分、この両者のコラボ(?)によって糖分が分解され、この時に放出される酸が歯を溶かしていきます。
ですから乳歯が虫歯になるということは、虫歯菌がすでに口の中に存在することを証明しています。
ではこの虫歯菌はどこからやってくるのでしょうか?人間が生まれたばかりのとき、口の中に虫歯菌は存在しません。ということは、赤ちゃんをこの虫歯菌に感染させない心配りが必要になります。
例えばお子さんにスプーンで食事を与えるとき、ご自分で食べる様子を見せてあげ、そのスプーンをそのままお子さんの口の中に入れる様子を見たことがありませんか。この瞬間なのです、虫歯菌がお子さんの口に住み着くのは。
子どもの細菌叢は親の細菌叢に似てくると言われています。その大きな理由として、箸やスプーンを知らず知らずのうちに共有すると、親の細菌がお子さんに感染するからです。いくら小さなお子さんが可愛いからといって、口移しで食べさせるなど論外でしょう。
乳歯が生える段階から、お子さんの口の中の健康に気を配ってあげること、それがあなたの残せる子供さんへの財産なのです。
※上記コラムに関するご質問・ご相談は、虎ノ門(神谷町)の歯科、岡田歯科クリニックへご連絡下さい。